人工呼吸器・加温加湿器

2024/08/31

人工呼吸器とは,呼吸が難しい方の呼吸を助ける医療機器.
設定によって自発呼吸を助けたり,自発呼吸ができない方の呼吸を担ったりします.

そして加温加湿器とは,人工呼吸器から送られる空気を温めて加湿する医療機器.
人工鼻を使用しない場合に使用します.

適応

人工呼吸療法は疾患や手術,分泌物等で自発呼吸が困難になった場合に適応となります.
また人工呼吸器を装着した場合も状態によって在宅療養が可能です.

NPPV

NPPV とは,鼻・口等にマスクを着けて換気を行う非侵襲的陽圧換気です.
気管挿管や気管切開・トラキオをせず,マスクのみで換気を行うため呼吸改善効果が不確実な場合があります.
自発呼吸があり,分泌物が少ない,意識状態が良い,循環動態が安定して居る場合等が適応です.

IPPV

IPPV とは,気管挿管や気管切開・トラキオで気道確保をして換気を行う侵襲的陽圧換気です.
人工呼吸療法が必要で,NPPV が適応とならない場合に適応となります.

仕組み

  1. 人工呼吸器が空気を取り込み,タービンやピストンによって吸気側の回路へ送られる (人工呼吸器にはタービン式やピストン式等の種類があります)
  2. 加温加湿器を使用する場合,吸気側へ送られた空気が加温加湿器にセットされたチャンバーで加温・加湿される
  3. 空気が本人へ送られる
  4. 呼気弁が開き,本人へ送られた空気が呼気側の回路へ送られ,排出される (ウォータートラップがある場合はウォータートラップを通ります)

と言う順で呼吸を行います.

タービン式とピストン式では設定が同じでも空気の送り方に微妙な違いがあるため,人工呼吸器を機種変更する場合は設定が同じでも違和感を感じる事があります.

人工呼吸器 設定

設定は医師のみが変更・決定できます.
設定が合わないとバッティングしてしまう場合も.
素人なのでちゃんと紹介できないかもですが,以前に調べてまとめた資料の内容をします.

制御方式

量制御・VC

量で制御するボリュームコントロール.
1 回換気量で設定,単位は ml または cc.
換気量が保障されるが,肺にかかる圧が上がり過ぎたり自発呼吸との同調性が悪くなったりする.

圧制御・PC

圧で制御するプレッシャーコントロール.
吸気圧で設定,単位は cmH2O.
気道内圧が保たれるが,換気量は肺の固さや気道の太さ,漏れ・リークに左右される.

モード

A/C

強制換気のアシストコントロール モード.
設定換気回数を強制換気,自発呼吸もトリガーして強制換気と同様の換気をする.
自発呼吸より呼吸仕事量は軽減するが過換気になりやすい場合もある.

SIMV

強制換気と自発呼吸の補助を行うモード.
設定換気回数を強制換気,自発呼吸をトリガしてプレッシャーサポート・PS の換気をする.
自発呼吸が設定換気回数未満となると強制換気,設定換気回数以上となるとプレッシャーサポート・PS または自発呼吸で換気される.
過換気になり辛いが,2 種類の換気様式があるため本人が換気様式の予測ができず呼吸仕事量の軽減はあまり期待できない.

PSV

自発呼吸をプレッシャーサポート・PS で補助換気を行うモード.
1 回換気量も本人が調節できる場合もある.
強制換気がないため呼吸停止や自発呼吸がない場合は不可.

CPAP / SPONT

自発呼吸にピープ・PEEP を付加したモード.
プレッシャーサポート・PS で自発呼吸をサポートする事も可能.
強制換気がないため呼吸停止や自発呼吸がない場合は不可.
BUV 基準に達するとカスタム設定が適用される.

その他人工呼吸器によってさまざまなモードがあります.

条件設定

一回換気量・Vt

1 回の吸気時に強制換気する空気の量で,量制御・VC 時に設定する.
単位は ml または cc.

吸気圧

1 回の吸気時に強制換気する圧で,圧制御・PC 時に設定する.
単位は cmH2O.

呼吸数

1 分間に換気する回数で,単位は回/分または bpm.

流量

吸気・呼気時に流れる空気の量で,量制御・VC 時に設定する.
単位は ml または L/分.

吸気時間

吸気にかかる時間,I:E比.
単位は秒.

プレッシャーサポート・PS

トリガ時に換気される圧で,自発呼吸の補助を行う.
単位は cmH2O.

ピープ・PEEP

呼気時にかける圧で,単位は cmH2O.

圧トリガ

自発呼吸を始める空気の圧を感知,単位は cmH2O.

フロートリガ

自発呼吸を始める空気の流れを感知,フローセンサ使用時のみ設定する.
単位は ml または L/分.

アラーム設定

高圧

気道内圧が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.
単位は cmH2O.

低圧

気道内圧が設定に達しなかった時にアラームを鳴らす.
単位は cmH2O.

高分時換気量

1 分間の換気量が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.
単位は L/分.

低分時換気量

1 分間の換気量が設定に達しなかった時にアラームを鳴らす.
単位は L/分.

頻呼吸

自発呼吸の呼吸回数が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.
単位は回/分または bpm.

無呼吸

自発呼吸がない時間が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.
単位は秒.

高 FiO2

吸気に含まれる酸素濃度が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.

低 FiO2

吸気に含まれる酸素濃度が設定に達しなかった時にアラームを鳴らす.

高呼気一回換気量

1 回の呼気時の換気量が設定を超えてしまった時にアラームを鳴らす.

音量

アラームの音量.

アドバンス設定

スロープ / ライズ

吸気時に吸気圧に達するまでの立ち上がり時間.
短いと気道内圧が早く上がり,長いとゆっくり気道内圧上がる.

PS サイクルオフ

プレッシャーサポート・PS で呼気へ切り替わる流量が基準値.
単位は %.

PS 最大吸気時間

プレッシャーサポート・PS で圧が達さない場合の最大吸気時間.
単位は秒.

流量波

矩形波または漸減波.
量制御・VC時に設定.

マスク換気

NPPV 等で使用する場合の設定.

連続流

連続で空気が流れる量で,マスク換気時に設定.
単位は L/分.

ユーティリティ

オートロック

一定時間が経つと設定が自動でロックされ,設定を変更するにはロックを解除する必要がある.

省電力モード

外部電源がない時に画面が暗くなる.

FiO2 測定

FiO2 の測定の有無.

カスタム設定

最低呼吸数

最低呼吸数に満たなかった場合の呼吸数設定.

呼吸数増加率

呼吸数が増加した場合の上限設定.

BUV 基準

バックアップベンチレーションの基準.
この基準でカスタム設定が適用される.

SPONT △P

SPONT の時のプレッシャーサポート・PS.

SPONT 吸気時間

SPONT の時の吸気時間.

呼吸回路

呼吸回路には,加温加湿器を使用する呼吸回路と人工鼻を使用する呼吸回路や呼気弁がある呼吸回路と呼気弁がない呼吸回路,1 ラインの呼吸回路と 2 ラインの呼吸回路等,さまざまな種類があります.
また人工呼吸器によっても違います.

体位交換等で気管孔にテンションがかかってしまう事があります.
そのため固定して引っ張られない様にしたり,呼吸回路の接続部からテンションを抜いて気管孔にテンションがかからない様にしたり,注意が必要です.

そして呼吸回路の定期的な交換や加温加湿器を使用して居る場合も外出等で人工鼻を使用するために呼吸回路を切り替える必要がある場合もあります.←医療従事者や家族のみ交換・切り替え可能です

加温加湿器

加温加湿器とは,吸気側の空気を加温・加湿する機器.
人工鼻よりも加温加湿性能がとても高い機器です.
人工呼吸器の吸気側呼吸回路にチャンバーを繋げ,チャンバー内の蒸留水を温めて,加温・加湿します.
機器等によっても違いますが,チャンバー温度と口元温度を設定が必要です.

加温加湿器使用中は人工鼻は禁忌ですので絶対に併用しないでください.
また加温加湿器を使用すると呼吸回路内に結露がたまてしまうため,定期的にはたき,気管に入らない様に注意する必要があります.

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